【後編】アクア×サイエンス社が語る“ウルトラファインバブル”の可能性
コインランドリー関連情報
― 技術革新から社会への波及まで ―
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ウルトラファインバブルの技術解説
― ミラブルコアとエア自給機構の融合
アクアとサイエンス社の協業によって誕生した「アクアミラブルデバイス」 。
その心臓部を担っているのが、サイエンス社のミラブルコアと、アクアのエア自給機構です。この二つの技術が組み合わさることで、業務用洗濯機という高流量環境でも、安定してウルトラファインバブル(以下UFB)を生成できるようになりました。

サイエンス社の天久氏は、その仕組みをこう説明します。
「ミラブルコアは、水流を高速で旋回させ、その 旋回力で水中の空気を砕きます。その空気が水流内でせん断されて微細な泡となり、UFBを発生させる仕組みです。機械的なポンプを使わずに水の流れだけで泡を作れるため、エネルギー効率が高く、耐久性にも優れています。」(天久氏)
この“ポンプを使わず泡を作る”という構造は、業務用機器において極めて重要です。
業務用洗濯機は長時間稼働や高負荷環境で使用されるため、構造を複雑にすると故障リスクが上がってしまいます。
その点、ミラブルコアは部品点数を増やさず、自然な水の流れで気泡を生み出す――まさに「シンプルで壊れにくい」設計思想が活きています。
一方、アクアが開発したエア自給機構は、水流の圧力を保ちながら効率的に空気を吸い込む仕組みです。
「一般的なエジェクター式では、空気を吸わせるために水流を絞り込む必要があり、流量が落ちてしまいます。それを防ぐために、一部の水流をバイパスさせることで流量を落とさず空気を取り込むことに成功しました。結果、流量を維持しながら安定して空気を取り込むことに成功しました。」(藤原氏)
これにより、洗濯に必要な水量を落とすことなく、連続的に微細な泡を生成できるようになりました。流量と吸気の両立――それはUFB技術の安定化を支える鍵であり、アクアの長年の洗濯機開発のノウハウが大きく貢献した点です。
サイエンス社の“泡を生み出す技術”と、アクアの“洗濯機設計技術” 。
異なる二つの専門領域が噛み合うことで、家庭用とは比べものにならない安定性と耐久性を実現する装置が生まれました。
それが、両社の知見を結集して完成した“アクアミラブルデバイス” なのです。
洗浄力・節水・衛生性の効果検証
― 数値で見せる“見えない泡”の力

UFBは、その名の通り、肉眼では確認できないほど微細な泡です。
だからこそ、開発チームにとって「どのように効果を示すか」が最大の課題でした。
アクアとサイエンス社は、目に見えない技術を“数値”で証明するため、何度も実験と検証を繰り返しました。
「まずは泡が本当に出ているのか、どのくらいの大きさで、どのくらいの数があるのかを測定しました。ウルトラファインバブルは目に見えないので、粒径や残存時間をすべて数値で確認する必要がありました。」(天久氏)
サイエンス社のラボでは、粒径分析装置を用いて泡の直径を計測。
その結果、直径約0.001mm未満の超微細な泡が安定的に生成されていることが確認されました。
また、泡が水中に長く滞在することで、洗浄効果が持続するという特徴も見えてきました。
アクアでは、実際の洗濯機を使った性能検証を実施。
標準コースでの洗浄力を比較したところ、UFB水を使うことで最大約13%の節水を実現しながら、通常水と同等の洗浄効果を得ることができました。
「少ない水で同じ洗浄力を出せるというのは、業務用として大きな価値です。」(藤原氏)
さらに、UFB水を使用しても洗浄力が低下しないことに加え、すすぎ工程における残留界面活性剤量が従来と変わらないことも確認されました。また、微細な泡が水中で広がる特性から、配管内部の汚れに作用する可能性も示唆されています。
今後の検証次第では、洗濯機内部の清潔性維持に寄与する可能性も期待されています。
こうした数値と実測データの積み重ねにより、UFBの効果は“感覚的なもの”から“科学的に説明できる技術”へと変わっていきました。
それはまさに、“見えない泡”を“見える成果”へ変えた開発チームの努力の証でもありました。
展示会での反響と可視化の工夫 ― “泡が見える瞬間”を創る
UFBは、目に見えないほど微細な泡であるため、開発当初から「どのようにその効果を伝えるか」が課題でした。
実際に目で見えないものを説明しても、聞き手には実感が湧きにくい。
そこでアクアとサイエンス社は、展示会での発信方法に試行錯誤を重ねました。
「2月にコインランドリーの展示会があったのですが、“導入してみたい”というオーナーさんの声が多く、好評でした。まだ発売前でしたが、期待の高さを感じました。」(藤原氏)
一方で、見えない泡の効果をどう“見せる”かという点には苦労がありました。
「いろんな汚れを試したのですが、劇的な差が見えるわけではなく、説明が難しかったです。」(藤原氏)
そうした中で生まれたのが、水あめを使った可視化のアイデアです。
着色した水あめを布につけてビーカーの水に入れると、UFBを含んだ水ではスッと溶け、通常の水では粘りが残る。
その違いを映像として比較することで、泡の存在を視覚的に伝えることに成功しました。
「本当に違いが出るのか半信半疑で試したのですが、水あめの実験 が一番わかりやすかったですね。映像で見せることで、“なるほど”と伝わる手応えがありました。」(藤原氏)

このシンプルなデモンストレーションは展示会でも大きな反響を呼びました。
目に見えない泡の力を“見える形”にしたことで、UFB技術の価値が一気に伝わりやすくなったのです。
*掲載画像は倍速で再生しています。
「効果をどう伝えるかはいつも課題でしたが、実際の映像で示せたことは大きかったと思います。」(天久氏)
“見えない泡”をどう伝えるか――。
両社がたどり着いた答えは、理論ではなく“体験で伝える”というシンプルな手法でした。
この展示を通して、UFBという新しい技術が“実感できる価値”として多くの来場者に届いたのです。
今後の応用と展望 ― 美容・医療・介護へ広がる可能性

UFB技術は、洗濯機の領域を超えて、さまざまな分野での応用が期待されています。
アクアとサイエンス社は、“水と空気”というシンプルな要素から生まれたこの技術を、暮らしの幅広いシーンへと広げようとしています。
「ファインバブル事業自体が、水と空気、液体と気体の技術なんです。だから応用範囲は本当に広い。美容も医療もそうで、医療の分野ではすでに使われているところもあります。」(天久氏)
ファインバブルは、上手く活用することで 物質を分散・浸透させる特性を持つことから、洗浄 以外にもさまざまな活用が期待されています。
たとえば、工場での食品洗浄や、介護の現場での身体洗浄など、人にやさしい水の技術として注目が高まっています。
「身体を洗うという点では、介護施設などからの問い合わせも増えています。やっぱり“やさしく洗える”という点が関心を集めているのだと思います。」(天久氏)
アクアとしても、UFBによる節水効果を社会的価値の一つとして捉えています。
「業務用洗濯機は水を大量に使うので、節水は大きなテーマです。洗浄力を上げつつ、水の使用量を減らせたことは、環境面でも社会的意義があると思います。」(藤原氏)
さらに、今後はオゾンとの組み合わせによって、除菌効果の強化なども視野に入れているといいます。
「空気ではなくオゾンエアを吸わせることで、除菌性能を高める研究も進めています。まだ開発段階ですが、いろいろな可能性が見えてきています。」(藤原氏)
美容、医療、介護、食品衛生――。
UFBは、清潔を支える“やさしい水”として、さまざまな分野で応用の芽を広げています。
洗濯から始まったこの技術は、いまや人の暮らしそのものを支える新しい水のかたちへと進化しつつあるのです。
社会的意義とSDGsへの貢献 ― “見えない泡”がつなぐ未来

UFBの開発は、単に新しい技術を生み出すことではなく、環境負荷を減らし、社会に還元する“持続可能な洗濯”の実現を目指した取り組みでもあります。
「業務用洗濯機は大量の水を必要とする設備です。その中で、洗浄力を損なうことなく使用水量を見直せたことは、私たちにとって非常に意義のある成果でした。日々の運用の積み重ねが、環境配慮につながる―そうした視点を持てたことも大きかったと感じています。」(藤原氏)
アクアが重視したのは、洗浄性能向上による節水です。
UFBを導入することで、汚れを落とす力が高まり、結果的に水の使用量を抑えることができるようになりました。
それは「環境に配慮したランドリー運営」に直結するものであり、SDGsが掲げる「持続可能な社会」の考え方にも通じています。
「洗濯という行為は、毎日のことです。その積み重ねで環境にやさしい仕組みができれば、業界全体にとっても価値があると思います。」(藤原氏)
一方、サイエンス社でもUFBの社会的価値を高めるための取り組みを続けています。
同社はファインバブル産業会(FBIA)の認定を受けており、第三者機関による検証を通して、効果や安全性を科学的に証明する活動を進めています。
「見えないものだからこそ、数値やデータで示すことが大事です。科学的な根拠を持って社会に伝えていくことが、私たちの責任だと思っています。」(天久氏)
UFBは、“清潔に洗う”という基本性能を高めるだけでなく、水資源を守り、環境負荷を減らす技術としても注目されています。
見えない泡が支えるのは、きれいな衣類だけではなく、人と地球が共に心地よく暮らせる未来です。
「私たちは洗濯機をつくるメーカーとして、洗濯に使用する水をどれだけ大切にできるかを常に考えています。水の使用量を低減しながら、より良い洗浄を実現すること――それは私たちにとって永遠のテーマです。」 (藤原氏)
ユーザー・企業へのメッセージ ― 未来を洗う技術として

UFB技術の開発を通じて、アクアとサイエンス社が感じたのは、“見えないものほど、本当の価値がある”ということでした。
それは単なる洗濯機の機能改善ではなく、人々の暮らし方そのものを変える可能性を秘めた技術です。
「“ミラブルの泡水で洗っている”ということ自体が、清潔で安心できるブランド価値になっている。洗うという日常の中に、少しの感動が加わったと感じています。」(藤原氏)
アクアでは今後、全国のコインランドリーを中心にUFB技術の普及を進める予定です。
UFB搭載による節水性をアピールした “次世代ランドリー”の実現を目指しています。
「UFBを導入することで、節水による運営コストの低減というメリットをオーナーさまにお届けできます。そして、ミラブルのブランド力によって、利用者の方々にも“安心して使える洗濯機”として選んでいただける。この オーナーとユーザー双方に価値をもたらすWIN-WINの関係を実現できることが、UFB技術の大きな強みだと感じています。」(藤原氏)
サイエンス社もまた、ファインバブルの可能性をより多くの人に届けたいと語ります。
技術の信頼性を高め、確かなデータに基づく「見えない泡の力」を広めることで、社会全体の水利用をより健やかに変えていくことを目指しています。
「ファインバブルは目に見えませんが、確かに働いています。私たちはそれを“科学”と“体感”の両面から伝えていきたい。そして、“水の進化”が社会全体に浸透していく未来を作りたいと思っています。」(天久氏)
アクアとサイエンス社――異なる分野の専門家が出会い、互いの強みを融合させて生まれたこの技術は、単なる製品開発の枠を超えた、“共創”の成果です。
洗濯機の中で生まれる無数の微細な泡は、やがて社会を動かす波となっていくでしょう。
小さな泡が生み出す新しい価値は、これからのランドリー業界に大きな変化をもたらす可能性を秘めています。
その一歩一歩を積み重ねながら、AQUAとサイエンス社はこれからも挑戦を続けていきます。
“見えない泡”が描く未来――それは、人と水と技術が共に進化する、新しい時代の始まりです。
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*「ファインバブル」、「ウルトラファインバブル」、「FINE BUBBLE」は、一般社団法人 ファインバブル産業会の登録商標です。
